ロックダウン、虹に彩られ拍手が鳴り響くイギリスと職業病

,ƒ今回コロナの影響でイギリス政府もしくは各企業が作ったCM、自然発生的に広がっていった出来事とそれを組み込んだ広告は非常に興味深かったです。フレッシュな情報とそれの活用は制作やマーケティングに携わっている人々にとって、制作のヒントになることがたくさんあります。

職業病的にみたロックダウン中のイギリスです。

毎週木曜日20時、ストリートに鳴り響く拍手

毎週木曜日の20時、夜のロンドンの街に拍手や口笛が鳴り響きます。NHSやキーワーカー(ロックダウン中も必要な職業)にカテゴライズされる職につく人々へ感謝を表し、窓や玄関口から外へ向けて人々が拍手をするからです。

感染のリスクがあるなら生活を支えてくれる人々の存在を当たり前とせず、感謝を視覚的・聴覚的にムーブにしたものです。この映像がSNSやTVでどんどん拡散され「団結力」を感じさせる映像なので影響も大きく今のところロックダウン後毎週行われています。

特殊な道具やお金をかけてではなく「拍手する」という非常にシンプルな動作なので、だからこそ誰でも参加することができます。

NHSで働いている叔母は「正直現場はそれどころじゃないからニュースでしか知らないわ。」と言っており、実際に最前線にたっている方々は賛否両論な部分もあるのですが…

個人的にいいなと思うのが、外に出た時に近所の人たちが「How’s it going?」から安否確認と手を振ったり叫んで話してコミュニケーションをとっていることです。

「何かあったら連絡して!」「手伝えることがあったら言ってね!」と、お年寄りも多いエリアなので近所がセーフティネットとして機能しているのは精神的に少し安心だと思います。

手紙がきた、首相から!テキストがきた、政府から!

イギリスがロックダウンされて2週間目をすぎた頃、一通の手紙が各家庭に届きました。手の洗い方や日常生活で気をつけるべきことが書かれた冊子と、首相官邸からの手紙が同封されていました。

印象的だったのが友人たちからのテキストやSNSでも「イギリス政府から手紙がきた」ではなく「ボリス首相から手紙がきた」という表現をしている方が多かったこと。

今回の手紙の内容(厳しい状況だけど我々なら絶対に乗り越えられる、みたいな)だと(実際に責任をとるかは別として)責任の所在や心強く思えるのは、団体組織名より個人の名前をしっかり出した方が良いのがわかります。

手紙の文字のフォントがお年寄りにも優しいサイズになっている気がします。A4の書類は10〜10.5ポイントでなんなら一枚に納めようと試行錯誤しそうなものですが、多分12ポイントくらいあるし行間もマージンもかなりしっかりとられていて見やすいです。

今回のコロナウイルスで最も影響を受けた世代や、インターネットに親しみがないもしくは持っていない人たちに情報がしっかり伝わるよう配慮されているのかなと思いました。使われている単語もわかりやすく情報格差の溝を少しでも埋めようというコンセプトが伝わってきました。

この手紙に関して同業者の友人たちとは「印刷費などの費用をサポートに向けるべきじゃないか、配達員がこの手紙を届けるために感染したらどうする?そういうクレームが上がっても対処する人が今いないのではないか」という意見もあれば「PDFのURLを送ったところで見る人が限られているならコストはかかっても紙という媒体は正解だろう」という意見もあって、デジタルと紙それを受け取る年齢や環境のことで盛り上がりました。

3月末にイギリス政府から突然「Stay at home. Protect NHS. Save lives」のコピーと共にマニュアルへ繋がるURLが送られてきたのですが、その時も「政府からテキストきたー!」と結構話題になりました。ただこのテキストに反して状況が悪化したからこの手紙を出したのかも…。

手紙が届き出したころにボリス・ジョンソン首相がコロナに感染し集中治療室へ運ばれたので「このタイミングでもしものことがあったらどうなるんだろう?」と思っていましたが、4月12日現在容態は安定しているようです。

「家にいてくれてありがとう」個々の行動に価値を持たせるスピーチ

夕方からDOWNING STREET(首相官邸)から今現在のイギリスの状況やスピーチが放送されるのですが、その中でNHSやスーパーマーケットなどで働いている人々はもちろん、家に籠もって感染拡大を防ぐ一般の人々にもお礼を言う場面がありました。

これを聞くと「家にいる」ことで一人一人が国が面している危機に国民として貢献しているという意識が出るだろうなあと思います。「感染拡大を防ぐ当たり前の行動」かもしれませんが、それに対して国が感謝を表明するのはとても良いことだと思います。

普段TVを全く見ない生活をしていますがコロナの状況把握のために、最近はニュースは見るようになりました。その中でにイギリスの政治家やスピーチを行う人々は前を真っ直ぐ見据えてわかりやすいクリアな話し方をするので、ついつい聞き入ってしまいます。英語という言語の特性はもちろんありますが体温が伝わってくるスピーチが非常に多いです。

ボリス・ジョンソン首相のスピーチは、状況は違えど何となくウィストン・チャーチルのスピーチを思い出しました。

あとBBCキャスターのこのスピーチも、美談や武勇伝といったエンターテインメント性に偏りがちな時にハッとさせられました。

それとは別に、ドラムを演奏する気象予報士がいたりTVって意外に面白いだなあと今回のことで発見しました。TVというかBBCが面白いのかな。

女王のスピーチと子供たちが作り出した虹

今回の緊急事態を受け4月12日20時からエリザベス女王の特例スピーチがTVで流れました。

イギリスを象徴する女王のスピーチが流れる中、未来のイギリスを担っていく子供たちが描いた、国を支える人々にむけた鮮やかな虹と、窓の中でその虹を貼って微笑む少女の映像が流れ…これだけ訴求力ある画は凄いと思いました。

スピーチのなかで印象的だった「We will meet again.(またお会いしましょう)」

シンプルな英文。でもこの一言で今現在遠くに住む家族や友人を思い出した人も多いのではと思います。女王のスピーチは身近な人や大事な人や、また大事な人に会うために今自分は何ができるか、何をすべきでないか、を考えるキッカケになりました。

93歳のイギリスという国をずっと象徴してきた立場の女性。イギリス王室の存続について色々な意見はあるものの、人々の前に立ち言葉の力で士気に影響を及ぼす存在というのは凄いよなあ〜と英国で生まれ育っていない一般庶民は思うのでした。

コロナで解雇された…

ロックダウン2週間目、ついに身内の一人がコロナの影響による人員削減で解雇を言い渡されました。今現在コロナの影響で雇用マーケットも衰弱する一方なのですが、そんな中で雇用拡大しているのが…

スーパーマーケットのドライバー!

スーパーマーケットは今でも開いていますが、感染拡大を防ぐためオンラインショッピングが推奨されていますし、基礎疾患がある方をはじめ外出が難しい人々にとっては特に大事なインフラです。

上記の身内もアプライしてすぐ就職が決まり今現在トレーニングを受けながら、実際に配達業務をしているそうです。彼女曰く「仕事をなくした人もいれば、ボランティアとしてやっている人もいるし、いろいろな人がいて楽しい」そうです。

スーパーマーケットも前代未聞の状況に対応できるよう年末まで今の状況が続くと仮定してストックや雇用を調節しているらしく、ロックダウン中であっても食糧や生活用品にあまり困らないのは多くの人々の努力の成果なのだと思います。感謝感謝…。

色々考えるのは楽しい、けど疲れてきた…

最初はあれこれコンセプトを予測して友人たちと議論していたのですが、だんだん「これも、あれも後でBBCやCMの背景に…?」と脳がバグってきて、疲れてきました。

勝手に想像して勝手に疲れているので完全に自業自得なのですが、脳にプログラミングされている「コンセプトを考えろ!見ているものの裏側を想像しろ!!」というのが行き場を無くして日常生活に侵食してきているのだと思います。

しばらくネットから離れて日向ぼっこしながらドリンクを飲むのが良いのかもしれません。ロックダウン中に必要なのはデジタル・デトックスなのかも…。

もともとひきこもり気質ではあるけど、強制的なひきこもりは割と楽しくないものだなあとロックダウン中の新たな気づきです。仕事をサボれない環境でサボるのは楽しいけど、いつサボっても良い中でサボるのは楽しくないと似ている…。

HELLO AGAIN!ブルースクリーンの恐怖と箱の外の世界