オペラ座の怪人 – 陰キャの純愛を壮大な楽曲で描くミュージカル

「オペラ座の怪人」と「レ・ミゼラブル」はロンドンで上演されているミュージカルのなかでも2大ロングランです。

ファンの方がいたら申し訳ないのですが映画「オペラ座の怪人」を観た時は「怪人はストーカーだしクリスティーヌは優柔不断すぎる!」と思うだけで終わったのですが、ミュージカルで観賞してめちゃくちゃ好きになりました。



怪人の苦悩と孤独がどんどん彼を狂わせていく怖さと、破滅的な道に進んでしまうほど人を愛せる事は切ない…そして深刻なぼっちで陰キャ、これはもう共感しかございません。

みんな怪人のことをいじめるかもしれないけど、私は怪人の味方だからね…!!という気持ちになります。私が味方でも得はないけど…。

オペラ座の怪人は本当にいるかも…圧巻の舞台美術と演出

パリのPalais Garnier(オペラ座)

パリのPalais Garnier(オペラ座)

今まで色々なミュージカルをロンドンで鑑賞してきましたが「オペラ座の怪人」の舞台演出は別格でした。最初のオークションシーンから、過去のオペラ座へ場面転換する演出の威風堂々っぷりと、観客を一気に舞台に引き込む力はまさに圧巻でした。有名なテーマ曲も王道だからこその貫禄、生演奏による重みはミュージカルならではです。

席について、舞台全体が目隠しで結構覆われているので不思議に思っていたのですが、場面転換と共に目隠しが取り払われ、ロンドンにいるのにまるでパリのオペラ座に来たようでした。ステージはもちろんですが、舞台の装飾までもがこのミュージカルを構成するのに計算されているのがわかります。

そして視点の切り替えも見事でした!
観客として舞台を観ているのに、観客席側がまるで舞台側になったような演出や、クリスティーヌの手を引き地下へ急ぐ怪人のシーンはどんどんと下に下がっていくような感覚がありました。当たり前ですが自分自身は動いていないのに、視点がストレスなく変化していく演出を舞台でやりきるとは本当に感激しました。

ミュージカルが好きな方はもちろんですが、私は舞台芸術を学んでいる学生さんに是非この作品を観てもらいたい!と思いました。ここまで舞台装置や演出に驚かされたミュージカルは、今まであまりないくらいです。

上演されているHer Majesty’s Theatre‎は伝統ある劇場なので、本当にこの劇場に怪人が住んでいるのではないかと思う独特の雰囲気があります。

あとこのミュージカルで「オペラ座の怪人」を好きになったのは、何よりも怪人がめちゃくちゃ魅力的だったからです。歌声も所作もすべてがめちゃくちゃカッコよくて、世界観に引き込まれました。

リピーターの人曰く役者が変わると一気に雰囲気が変わる!と言っていたので、またキャスト変更があったら観に行ってみたいです。



複雑で繊細な人間の感情を描く舞台

ミュージカル劇場をでるときに、ここまで楽しみまた登場人物たちに共感した自分自身にとても驚きました。映画で観た時の感想を引きずっていたので、怪人のジメジメさとクリスティーヌの優柔不断さがミュージカルでどうなるか…と、正直わりとネガティブな感情をもっていました。

ですが前述したとおり、まず舞台演出に完全に魅せられ、役者さんの鬼気迫る演技と舞台からキャラクターたちの感情が溢れ出てきて、迫力ある演奏に伸びやかな歌声は、白黒のみでは語ることのできない人間の感情を見事に表現していました。

陰キャだストーカーだと言っておりましたが、怪人はああいう風にしか愛せない人なんだなと思います。

クリスティーヌを地下に連れてきた時に2人で歌うシーンで、怪人が彼女をとても大切に愛おしく思っているのが伝わってきました。結果として軟禁状態なのですが、行動の奥底にあるのはただただた二人で時間を過ごしたかった、という純粋な気持ちだったのではないかと思います。

パリのPalais Garnier(オペラ座)

自分がどれだけ好きでも相手から同じように愛される事は時に難しい事です。

映画でのクリスティーヌに対しては「もう~!ハッキリ迷惑だって言っちゃいなよ!」と思っていたものの、ミュージカルで初めて彼女の慈悲深さと音楽を通して怪人の心の美しさを知っているからこそ、彼女自身も苦しんでいたのだとわかりました。

このミュージカルが長らく愛されているのは、人間がもつ普遍的な愛情という感情は喜びと温かさをもっているけれど、それと同時に悲しくて切ないものを帯びており、それを見事に表現しているからだと思います。



ラウルと怪人、付き合うならどっち?

芸術作品を鑑賞しておいて、非常に下世話なのですが友人と盛り上がったのが「怪人とラウル付き合うならどちらが良いか」という話題です。(怪人とラウルは間違ってもあなたは選ばないだろうというツッコミはなしでお願いします笑)

ラウルはあの時代の貴族だし、強引さが行き過ぎるとDVに繋がりそう、とか、怪人の家にネット回線繋いで大型TVと各種ゲーム機があれば結構良いとおもう、など好き勝手言いまくり「クリスティーヌってちょっとダメ男を引き寄せる系の人だね~」とザ・不毛な話題で盛り上がりました。でも不毛な会話ほど楽しい。

Her Majesty’s Theatre‎ 観劇にオススメの席

「オペラ座の怪人」の最も有名なシーンといえば、シャンデリアが落ちてくるところです。

ロンドンのHer Majesty’s Theatre‎では、席によってこのシャンデリアが落ちてくるシーンを観ることがかなり難しい(ドレスサークルなどによって視界が遮られた席など)席があります。

これらの席は「Restricted view seats」と呼ばれその分値段は安いです。しかしこのシャンデリアが落ちてくるシーンは、めちゃくちゃ迫力がありますし、その他の演出でもRestricted view seatsだと他にも一体何が起きているのかわからないシーンが多いです。

オススメなのがストール席のE、F列の真ん中あたり。このシートでは真上にシャンデリアがあるためめちゃくちゃ迫力があり、また舞台から近距離すぎず、でも役者さんの服のすれる音が聞こえるほど近いので、とても臨場感があります!

ドレスサークル(2階席)でも全体を見渡せて、ストール席とはまた違う良さがあるそうです。リピーターが多いのは、席によって「オペラ座の怪人」の新しい魅力に気づき、また席を変えて観賞したくなるのもあるそうです。私の元上司は在英期間数年の間に何十回も行ったと言われており、本当にハマる人はとことんはまるミュージカルだと思います。

Her Majesty's Theatre

Haymarket, St. James’s, London SW1Y 4QL

 

余談ですが「オペラ座の怪人」観劇中、ファイアーエムブレム風花雪月のドロテアちゃんとマヌエラ先生を思い出しました…!歌姫ってこんな感じなのかなあ、とか物語のなかの観客席にいるのが貴族かなあ的な。面白かった~~。