また怪我をされたスタッフの皆様の一日も早い回復をお祈りしております。
研修で11月末は関西にいました。
イギリス出発前に大惨事に見舞われた京都アニメーション第1スタジオが、2020年1月から取り壊されるというニュースを見ました。
事件が起きたのが7月、ツイッターやニュースで何度もみたあの建物が取り壊されるのか…としんみり、研修のスケジュールを見計らって手を合わせに六地蔵まで行ってきました。
くるりの曲に登場したり、地下鉄で時々通過したりで下車したことはなかった六地蔵。京都の穏やかなカントリーサイドの空気が漂う街でした(個人的に大阪ののんびりした街、豊中市と似た空気を感じた)
電車では「この電車は伏見稲荷には止まりませんよ~」と何度も放送されており、間違える人が多いのだろうと思います。ルーマニア人の同僚が凄まじい早朝に伏見稲荷へ行くと行っていたけど、ちゃんと行けただろうか…と少し不安に。(後に聞いたところちゃんと行けたそうです)
11時から丹波口で仕事だったので早足で駅をでてスタジオに向かいます。
この日はとても天気が良くて青空がきれいです。ロンドンは冬は曇り空が多いのですが、日本は冬でも青空が広がる日も結構ありますね。六地蔵駅からスタジオまでは歩いて10分ほど、途中住宅地や河原を通りました。
イギリスでもこの事件のニュースはトップニュース扱いで、アニメに全く興味がない家のイギリス人からも「Kyoaniという会社がトラブルに見舞われている、大丈夫なのか」とテキストが来るほどでした。
日本に住む親からは「友達で京アニで働いてる子がいるならすぐ連絡をとった方が良い」と、ゲーム・アニメ関係に従事している友人が多いのでラインが来たり、ツイッターに並ぶ絶望的な情報に気分が落ち込み、遠いイギリスにいながら気が気ではなかったです。
細い住宅の隙間を抜けた先に、壁の一部が真っ黒に変色し窓が落ちた第1スタジオが見えました。
取り壊しの準備なのか一部は白い目隠しがされていて、警備員の方が一人立っていました。
TVでみた映像より近隣に建っている住宅地はもっと近くに建っているように見えて、住民の方々も本当に怖かっただろうと思います。
献花台はもうすでに撤去されていますし、今後の取り壊しを考えるとお花を手向けるのも迷惑になる可能性があるので何も持たずにいきました。
警備員さんがいるほかは通行人もおらず、報道陣もいなかったので穏やかな時間でした。本当にここで、あんな陰惨な事件が起きたのだろうかと思うほどでしたが、目の前には物悲しく佇むスタジオがたしかに存在し現実に起きたことなんだと認識させられました。
たくさんの作品を生み出してきた場、これからも生み出していくはずだった場が事件現場になったこと、犠牲者の方々にとって自分の才能を存分に発揮できていた場所が遺族やファンにとって悲しい場所になってしまった事、そこだけ事件の時のまま時間が止まっているようでした。
そのあと六地蔵を少し散策して仕事へ向かいました。河原は犬を散歩する人たちがいて、電車の音が響き、のどかな冬の日本の風景が広がっていました。
事件が起きた時にイギリスのツイッターTLを見ていると、英国在住の京アニファンの悲壮感があふれる追悼ツイートの波の中に、作品への愛情とクリエイターへの敬愛の念が溢れかえっていました。
様々な外的要因で分断されがちな国籍ルーツや宗教などのバックグランドを、京アニが生み出した作品は軽やかに飛び越えて、9000キロ離れたイギリスひいては海外に住む人々にたくさんの夢を見せていたんだなあ、と改めて感じました。
私が手を合わせても亡くなった人が帰ってくるわけでも、怪我をされた人や心の傷が癒える助けになるわけでもないので、帰り道は何とも言えない無気力感で六地蔵駅へ引き返しました。
遠くに住んでいる者の献花すら叶わない無念さと、縁もゆかりもない英国でアニメの話題をきっかけに友達が出来たことのお礼のための手合わせでした。
そして京アニがこれから立ち直りますように、という祈願を込めて。
でも本当にこんなこと起きてほしくなかった。時間が戻れば良いのに、と今でも思います。
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